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[Part3]ヨガにおけるケガを防止することvs.ヨガを妨げること: 関節の可動性、安定性と固有受容感覚

全ての医術において主要な概念は、体の不均衡を正常化することです。バランスを回復する基本原則は、ナヴァホの砂絵、アーユルベーダ、伝統的漢方医学から現代の逆症療法まであらゆる文化で見ることができます。そして、本当に治癒力がある療法は、バランス悪く実践すると逆にケガの原因となってしまうことがあります。


例えば、関節の動きやすさが有益なのには多くの理由がありますが、関節のバランスは、安定している必要があります。このブログ記事では、関節の固有受容感覚の概念や、関節の安定性とヨガとの関係について考察し、ヒップオープ二ング後の筋肉の固有受容感覚を「再設定する」ヒントを見つけていきます。

固有受容感覚とは、ヒップソケット (寛骨臼)の中の大腿骨頭のような、隣接している身体の部分のそれぞれの位置や、身体を動かす時にはたらく筋への感覚のことです。これは体外の刺激を感じる外受容(地面の上の足の感覚) や、体内で起こる刺激を感じる内受容 (苦痛、空腹等)
とは対比的です。

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それではある種の関節の「GPS」としての固有受容感覚を見てみましょう。

関節位置は特殊な神経の終わり部分で検知され、それは筋肉、靭帯や関節包や骨膜 (骨の表面にある)
科学的な研究により、骨関節症患者においての関節位置の感覚は低く、固有受容感覚の衰えがこの病気の発症に大きく関わっている可能性があることがわかりました。実際、固有受容感覚を改善する運動は、骨関節症に効果をもたらすことが分かっています。

また関節過度可動患者の場合も、固有受容感覚は鈍くなります。関節位置の感覚を改善する運動は、このタイプの症状の患者にも有効です。また不安定さが原因で関節に生じる痛み (関節炎、過度可動や器質性の病変のような不快感の原因を特定できない場合)も、固有受容感覚が要因である可能性があるとされています。同様に、特定のストレッチを行ったあとに見られる、アスリートのパフォーマンス低下は、関節位置の感覚の低下に関係している可能性があります。

これをヨガに当てはめてみましょう。ヒップオープ二ングのポーズの後に股関節に痛みを感じる人がいますね。この痛みは体性感覚の低下に関係しているかもしれないと理解し、私はこのポーズの後に関節位置の感覚を回復するちょっとしたテクニックを使っています。例えば、Blue Spirit Intensiveの間、私は股関節にこの種の痛みのある生徒の指導をしました。蓮華座のポーズに繋がる手順後に、そのテクニックを使い、股関節の関節位置の感覚を「リセット」します。その生徒は「リセット」後、いつも感じていた痛みがとれ、その効果はその日一日中続きました。

これにより私は、生徒達が感じた股関節の痛みは、ストレッチ後の筋肉の固有受容感覚の低下に関係している可能性があると考えるに至りました。このヨガをした後の感覚のズレは何か他の活動をする際わずかな不安定さをもたらしてしまいます。

さらに、関節の可動範囲の中心にある股関節周りの筋肉を同時活性する固有受容感覚を育てるテクニックで、この痛みは和らげられるようです。


そのテクニックとは・・・

ヒップオープニング後やシャバーサナの前に、膝を前に出し腰を深く固定する英雄のポーズ2の中間バージョンを行います
(図2)。次に前方の脚の股関節の筋肉を同時活性します
(同時活性は、反対の動きをする同時に伸縮する筋肉に関与する)。

この時のコツは膝の内側を固定した物に押し当て、膝の外側も同時に同じような物に押し当てているイメージをすることです
(膝を中心にし、動かしてはいけません)。
この運動は股関節内転筋と外転筋、そして動きの中間段階の関節の位置にある内側と外側の回旋筋に働きかけます。適切に行うことで、これは股関節に安定感を与えるでしょう。

このテクニックは、神経に作用するので強い筋肉の伸縮を必要としません。筋肉のはたらきと股関節の安定を感じる程度の強さで行うだけです。さらに、ポイントは短い時間で十分なことです。私は20秒で、片方ずつ2回行います。この効果は通常の範囲から外れたGPSの「再設定」に少し似ています。図3から5は、
力の向きを矢印で示した一連の筋肉を表しています。筋肉の可視化はこの手順をわかりやすくしています。

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図2:英雄のポーズ2の中間バージョン。これは固有受容感覚を養うために行います。

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図3:英雄のポーズ2で股関節内転筋、外転筋と回旋筋を同時活性します。

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図4:英雄のポーズ2で股関節内転筋、外転筋と回旋筋を同時活性します。

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図5:英雄のポーズ2で股関節の深い位置にある外旋筋を活性します。

ここまでご覧になっていただきありがとうございました。私達は、股関節の固有受容感覚を鍛えるこのヒントが皆様のお役に立つことを願っています。注意して頂きたいのは、もし股関節の痛みや他の症状が続くようであれば、適切なトレーニングを受けている資格のある専門家、医療機関に相談に行くようにして下さい。


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